耳の直下には、側頭骨という骨があります。ここには神経はもちろん、血管、三半規管などの重要な器官が通っています。聴覚と平衡感覚の器官を含み、麟部、乳様部、錐体部からなっています。側頭骨は、蝶形骨、頭頂骨、頬骨、下顎骨らと関節で連結し、 これらの骨は、歪んでしまう可能性を常に秘めているのです。

側頭骨が歪むと、同側の骨盤も歪んでしまうと言われていますし、骨盤の歪みは、脊柱のアライメントを狂わせ、脊髄硬膜によじれを生じますので、放っておけません。 側頭骨の変位で多いのは、時計回り、反時計回り、外方、内方などの回転ですが、様々な方向に歪むのです。歪むと、聴覚や平衡感覚に問題が出てきやすい事は、何となく想像がつきますし、顎関節にも異常を生じ、顎関節症を発症したり、やがては、全身的な歪みへと波及していきます。しかし、骨盤まで歪んでしまうとは、想像もしないのが、側頭骨の変位です。まさに、全身が連動している証と言ってよいと思います。

側頭骨を正しく調整すると、骨盤も整い、腰痛が改善される事も稀ではありません。これは、上述の理由によります。背中の丸い人は、この側頭骨が歪んでいることが多いようで、肩も凝っている事が多くあります。そして、このような人は、顎が前に突き出ていて、あまり健康そうには見えないのです。異常であれば、何とかしたいものです。
側頭骨も自身で調整することが可能です。ただし、頭蓋内には脳が入っているのです。十分注意が必要です。ここをよく理解して、自己調整に挑戦してください。
【側頭骨調整法】
まずは、両手で耳をふさぐようにして、側頭骨の動きを感じ取ってみましょう。少し難しいですが、誰でも出来ます。
動きがなんとなく判ってきたら、その動きに手を合わせます。その時、力はいりません。触れている程度でよいのです。これだけで、確実に頭蓋骨の調整が出来ます。姿勢もその場で改善します。それも薬を使わず、強い力を使わず、安全で確実にです。噛みあわせが悪いと思った時などは、是非試してみてください。これだけで、万病の不調回復に応用できます。
繰り返しますが、頭部は非常にデリケートです。決して強い力は要りません。触れているくらいです。気分が悪い時は、即、中止してください。ご自分で実践する際は、全てにおいて、自己責任で実行してください。
【側頭骨の生理学】
側頭骨の運動は、錐体部の中を通過する斜めの軸の周りを回転します。『反時計回りが外回旋』で、『時計回りが内回旋』となります。外回旋は、吸気時の蝶形後頭底結合の伸展運動と同期し、 錐体部は頭蓋骨外側方に向かって、前外側方に動きます。麟部も前外側方に動きます。また、頬骨突起は、前外側方に加え、下方、反時計回りに、動きます。顎関節の下顎窩は内側、後方に移動し、乳様突起は後方、内方に移動します。つまり、お皿の口がひろくなって行くイメージです。内回旋は、呼気時の蝶形後頭結合部の屈曲と同期しています。動きは外回旋の場合と、反対の方向になります。
この側頭骨の回転は、推定部内の軸によって回転しますので、その変位は、頚動脈の循環に影響を与える事が容易に想像がつきます。後頭骨の伸展時には、側頭骨は外回旋しますので、乳様突起は上方に移動して見えます。逆に後頭骨の屈曲の時には、側頭骨は内回旋しますので、乳様突起は下方に移動しているように見えます。側頭骨の外回旋は、蝶形骨を屈曲方向へ移動させます。また側頭骨の錐体突起は後頭骨の基底突起関節を作っています。したがって、側頭骨の変位自体は、周辺の頭蓋骨にも即影響を与え、生理作用を変えてしまうことが考えられます。

【他の頭蓋内組織及び周辺器官への影響】
側頭骨は、蝶形骨・後頭骨・頭頂骨・頬骨らと縫合にて関節を作り、その変位は単体に留まらずに、頭蓋骨全体へと、影響を与えます。また、側頭骨には、小脳テントが付着しています。小脳テントの内部には、延髄・橋・小脳らがあり、動眼神経や滑車神経は、小脳テントに圧迫を受ける可能性を秘めています。三叉神経も硬膜の影響を受ける可能性を持っていますし、外転神経は、錐体蝶形靭帯によって圧迫を受けるともいわれています。顔面神経や内耳神経は、内耳道を通過するため、頭蓋骨の変位で影響を受けます。
また、循環系にも大いに影響を与えます。動脈においては、椎骨動脈と内頚動脈がありますが、頚動脈は、頚部を上行して、側頭骨に入り込んで破裂孔を通過します。ここの位置的な変位は、内頚動脈の血液供給に大きく影響します。後頭骨に影響を与えますと、椎骨動脈・椎骨脳底動脈の血液循環を阻害しかねません。静脈血においては、95%を通過する頚静脈孔に大きな影響を与え、廃血を滞らせます。更に頚静脈孔には、迷走神経・舌咽神経・舌下神経等が走行していますので、ここの異常は、多大な全身的影響をこうむりかねません。側頭骨の変位は、内耳神経をはじめ、内耳にも影響を与え、聴覚においても影響を与えます。
【側頭骨変位おける症状】
難聴や耳鳴り等の聴覚の異常、三半規管の不調を起こし、めまいやふらつきの平衡感覚異常が現れます。脳神経支配域の不調。その他様々な不定愁訴がでてきます。特に、脳神経の不調は大変起こりやすく、一般医療検査で異常なしのことは多くあります。
【側頭骨変位に於ける診断の指標】
外回旋変位は、乳様突起が後方・下方に変位して、側頭麟は、外側に隆起します。これによって、外回旋側の後頭骨は下方にさがり、外回旋側に頭が傾くことが多くあります。下顎関節は後方へ移動しますので、顎関節の左右差が生じます。左右差の長期化は、顎関節に影響を与え、顎関節症もしくは噛み合わせの不調、クリック音、原因の無い歯痛へと発展していきます。外回旋側の蝶形骨は屈曲して、蝶形骨大翼は高くなります。側頭骨の内旋変位においては、外旋変位と反対の変位が起こります。