【脳の形成】
人間の大脳は、頭蓋骨によって、外界から守られ、旧皮質と新皮質とに分けられています。脳細胞の数は、およそ140億個とも言われています。 その脳細胞一つ一つに、8000ものシナプスが形成されます。ですから、単純に120兆という膨大な数の記憶組織が、私たちの脳なのです。神経系は、受精後に発達を開始し、生後8才くらいまで続きます。そして、生後の神経の発達は次の通りに進行していきます。
【懐胎時〜約16週間】
脊髄と延髄の発達段階です。生命維持機構の成立が優先されます。筋肉の発達もありますが、随意的な運動は出来ません。
【妊娠5ヶ月目〜生後5ヶ月】
延髄から橋までの発達です。この次期は、言わば、両性類的な神経の発達段階に当たり、腕と脚の同側動作までが可能となります。同側の脚と腕が一緒に伸展および屈曲をして行われます。頭を無理に回転させると、頭を回転した方と逆の腕または脚が屈曲する反射が見られます。生後約20週間後に現れてきます。この頃から目や耳の機能が発達してきます。
【生後6ヶ月頃〜】
中枢の発達段階です。この頃からは、哺乳類的機能の発達段階といえ、片方の腕と足を屈曲すると、反対の腕と脚が伸展するクロスパターン・クローが見られるようになります。この頃からは、身体の両側が一緒に使えるようになります。目や耳の機能も更に発達して、両側が同時に使用できるようになります。音が、どらから来ているかも、この頃から判断できるようになります。
【生後1年頃〜】
大脳皮質が活動を始めます。体の左右を一層上手に使えるようになります。1才前後からは、這い這いを卒業して、いよいよ歩行が出来るようになります。歩き始めは、まだ腕が上手に振れずに、クロスパターンは、しっかりと機能していない時期です。目や耳の発達は著しく、両方が連動して働き、音の方向や遠近感、更に、空間認識等の高度な認識能力が発達してきます。
【生後3歳頃〜】
大脳新皮質の優位支配の発達が開始します。右利きや左利きの片側優位が出現します。殆んどが遺伝的要素で決定し、利き手の選択に始まり、利き足、利き目、利き耳と決定していきます。片側の優性は、人間独特のものです。大体5才〜8才頃までに右利きか左利きかが決定します。
我々、脊椎動物では、神経系の主軸は背側にあり、胚体の背面に神経管が発達して、脊髄が出来上がります。その先端が、やがて膨らんで、脳へと発達していきます。
人間の大脳皮質は、厚さが2.5ミリ位です。この2.5ミリくらいの厚さの中に、更に6層の神経細胞の層構造を作り、140億個もの神経細胞が存在しているといわれています。さらに、細胞には、ネットワークが数千本あり、これが、他の細胞とさらにネットワークを作っていきます。その数は膨大です。人間の脳は脊髄の先端が膨らんできて発達してきたものです。脊髄の上には、延髄、中脳、間脳があり、その上には両側に大脳半球が存在しています。延髄の後方には小脳があり、後頭部に位置しています。大脳の表面には『溝』が存在しています。この溝に沿って、前頭葉・頭頂葉・後頭葉・側頭葉に分かれています。
前頭葉は、前頭骨の内部に存在し、『おでこ』に当たる部分です。前頭葉は、生命維持機能には直接関係していませんが、人間が人間らしく生きて行く上での、創造活動の源泉となっています。
頭頂葉には、顔・手・足を支配する上での運動中枢があります。反面、知覚を感じる中枢が有り、体性感覚野と呼ばれています。
後頭葉は、視覚の中枢です。目が視覚の末端であるとするならば、網膜に映った映像を判断するところが後頭葉です。
側頭葉は、聴覚の中枢にあたります。よく聞く海馬や脳梁が、ここに存在して、記憶の中枢であると考えられています。
小脳は運動機能を司り、平衡感覚等を統制しています。左右の小脳半球と虫部で構成されて、この部位の不調は、ふらつきや歩行困難などと関連しています。
中脳は、大脳皮質と脊髄の間に位置しています。中脳胞に由来する部分で、蓋板、大脳脚、被蓋、刻質を含んだ部分にあたります。
間脳は、視床、視床下部、松果体を含み、大脳半球に殆んど覆われているので、外からは殆んど見えません。意識水準を決定している部分です。
大脳辺縁系は大脳半球の内側面の総称ですが、帯状回、透明中隔、脳弓、乳頭体、海馬、海馬傍回などを含んでいます。ここは、食欲や性欲などの本能的な行動に関する部分や、怒りや喜びなどの情緒を司っています。
視床下部は間脳の下部で、自律神経の最高中枢です。ホルモン分泌の中枢でもあります。また、本能にかかわる種々の中枢も存在しています。
延髄は、生命にかかわる種々の中枢が存在しています。心拍中枢・呼吸中枢・血管運動中枢など生命維持に必要な必須の神経核があります。
以上のように、脳は仕事を分担しながら、統合的に体のバランスを保っています。医学の進歩は目覚しく、脳の構造や生理について沢山の事が判って来ていますが、まだまだ判らないことが多いのも事実です。
【脳脊髄液のシステム】
中枢神経は、脳が90%で、脊髄が10%で構成されています。脳も脊髄神経も代謝を行い、栄養素と酸素を必要とします。血液循環が必要であり、その供給を荷っています。また、神経組織自体の代謝には、脳脊髄液の循環が不可欠です。

脳脊髄液は、無色・無臭の液体で、脳や背髄神経を浸し、頭蓋骨・脊椎の内部を循環をしています。100ミリリットル〜150ミリリットルが全体の量であり、循環して静脈に吸収されます。1日に入れ替わる回数は、3ないし4回であると言われています。95%は側脳室で作られ、残りの大部分は第3脳室と第4脳室で作られます。この脊髄液の循環は、頭蓋仙骨呼吸運動メカニズムによって成されていると考えられています。脳脊髄液の循環の順路は、側脳室から第3脳室を通って中脳水道、第4脳室へと至ります。そして、第4脳室の外側口および正中孔を通って、クモ膜下腔に入って、脳および脊髄に供給されています。
【髄膜すなわち硬膜・くも膜・軟膜の三層の被膜】
頭蓋骨と脳の間には、脳を包んでいる3層の被膜があります。外側から硬膜・くも膜・軟膜が、それに当たります。最外層の硬膜は、繊維質で強靭な膜です。脳を覆う部分は『脳硬膜』、脊髄神経を覆うものは『脊髄硬膜』と呼んでいます。脳硬膜は、頭蓋腔を仕切るために、部分的に突出している所があります。左右の大脳半球を仕切っている『大脳鎌』と、左右の小脳半球を仕切っている『小脳鎌』と・大脳と小脳を仕切っている、丁度テントのような格好をした『小脳テント』、トルコ鞍の部分に張っている『鞍隔膜』があります。また、脊髄神経の被膜も3層に別れ、外側から硬膜・くも膜・軟膜が存在しています。背骨の中には、トンネルが存在していて、それは、まさに脊髄を守るための頑丈なトンネル様の通路といった感じです。この中に被膜があり、内部には脊髄神経が通ります。
硬膜は、後頭骨の大後頭孔と頚椎2番・頚椎3番の内側に硬く付着しています。その後ホース状に伸びて行き、脊髄神経を包み、第2仙椎まで伸びて付着しています。
くも膜は、脊髄くも膜から脳くも膜へと続いています。くも膜との隙間には、脳脊髄液が循環し、間には、くも膜小柱(くもまくしょうちゅう)と呼ばれる繊維が張られています。脳は、このくも膜小注によってのみ支えられている形になります。
軟膜は、中枢神経を覆う最も内方の膜になります。硬膜に比べ、とても薄く、脊髄神経に密着しています。
【脳の血管系】
脳の血流量は、精神活動時でも、睡眠時でも、おおよそ一定に保たれています。全身の酸素消費量の約20%を消費しています。1立方ミリメートルあたりの毛細血管の長さは1100ミリメートルにおよび、毛細血管の密度が非常に高いことを意味しています。脳へ入る血管は、椎骨動脈・内頚動脈です。頚椎の横突孔を通って、第1頚椎の後方に回って、延髄の腹外側を上行して、橋の部分で合体して、1本の脳底動脈となります。また、更に枝分かれして、間脳の後部・中脳・橋・延髄・小脳・後頭葉の内側面に分布しています。内頚動脈は、頚部を走行して側頭骨から脳に入り、下垂体の外側に出てきます。脳底動脈と共に、ウィリスの動脈輪を形成して、ここから前大脳動脈・中大脳動脈・後大脳動脈・小脳動脈を初めとする多くの枝となり、くも膜や軟膜の中を走り、毛細血管に分布して、脳の各部位へと、動脈血を供給しています。また、静脈血は、大脳静脈や小脳静脈に集まり、静脈洞と呼ばれる部位へ送られます。ここから頚静脈孔を通り、内頚静脈として、脳から送り出されます。脳の血管と神経細胞との間には、血液脳関門が存在し、両者の間には、グリア細胞と呼ばれる細胞が介在して、酸素やブドウ糖のみが、細胞へ通過できるシステムがあるとされています。
【頭蓋骨の位置異常は脳の位置異常を誘発?】
このように、頭蓋骨の脳は、位置的に密な関係を有しています。頭蓋骨の歪みは、脳神経もしくは脊髄神経の歪みへと移行します。僅かな脳の位置的異常は、様々な不調を自覚症状として発信し、医療検査では、原因不明とされる不調の要因となっていることも大いに考えられます。現に、様々な手技療法で、精度の高い頭蓋骨の調整は、不定愁訴の回復のお手伝いとなることが、しばしば報告されています。とはいえ、医療的には不確かな部分であり、慎重を要することは言うまでもありません。